常任委員のつぶやき

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「日本の響」に行ってきました


 スポーツの秋。読書の秋。食欲の秋。
秋の楽しみにも色々ありますが、会員の皆様はどのように秋をお楽しみですか?
私は先日、芸術の秋を楽しんできました。
 
 高校39回の長谷場由美さんが当HPの掲示板でご案内くださった邦楽の演奏会「日本の響」です。(10月2日、観世能楽堂)


 
 お待ちかね、長谷場さん(芸名:城ヶ﨑明雪勢さん)ご出演の曲は『乱輪舌(みだれりんぜつ)』でした。17世紀(江戸時代)に作曲された箏の器楽曲で、今までに様々な編曲や多種多様なアンサンブルが工夫されてきたそうです。今回は箏の8面編成。私はこの曲を初めて聴いたので、私にとっては「初バージョン」でした。変則的な裏打ちのようなアクセント音がさりげなく効いていて、格好良い曲だと思いました。
 
 全12曲の大取りは、「これまで〜なりや、嬉しやな」でお馴染みの『熊野(ゆや)』でした。
 
 熊野は、平宗盛の寵愛を受けている女性です。重病の母親のことが心配で、一刻も早く見舞いたい気持ちで一杯なのに、宗盛の命には逆らえず、仕方なく花見にお供します。
 
 この曲は、これまでに二回聴いたことがありました。
 
 一回目は国立劇場でした。大人数編成の演奏だったので、クライマックスの「これまで〜なりや~」は大変迫力があり、熊野の並々ならぬ喜びが伝わってくるようでした。
 
 二回目は山勢麻衣子さんの演奏会(紀尾井小ホール)でした。3人編成で、しっとりとした「〜嬉しやな」。表情には出さず、胸中で喜びを噛み締めている熊野が浮かびました。
 
 今回は5人編成でした。山勢松韻先生方の箏と麻衣子さんの三絃に加えて、笛があしらわれていました。高く遠くへ飛んでいくような笛の響きから、熊野の頭上に広がる景色が見えてくるようでした。
 
 能楽堂での演奏会には、着物鑑賞のお楽しみもありました。能舞台には、幕が降りることはありません。それゆえ、演奏者の立ち姿も見ることができます。黒留袖の裾模様をこれほど沢山見たのは初めてでした。
 
 中でも、松韻先生と麻衣子さんが演奏を終えて立ち上がった時には、「おぉ!」と声を上げそうになりました。
雑誌『美しいキモノ』で見た裾模様だったのです。(2021年秋号、8月19日発売、「山田流箏曲の人間国宝 六代山勢松韻さんと思い出のきもの」)
 
 芸だけでなく着物も五代から六代へ、六代から麻衣子さんへと受け継がれていることを同誌から知り、感銘を受けていました。
 
 その時は緊急事態宣言下であったため、「お二人の共演を観られるのは、来年になるかしら…」と思っていました。ところが、私の想像よりも早く演奏会が開催されて、本当に良かったです。
 
 素晴らしい演奏と、マスク着用を感じさせない唄に、もっともっと大きな拍手を送りたかったのですが、能楽堂を意識して、しとやかさを装い、拍手を控え目にしてしまったことが、今、少し悔やまれます。
 
 まだしばらくは感染再拡大の心配が続きそうです。一日も早くコロナ禍が収束して「これまで〜なりや、嬉しやな」と喜べる日が来ることを願いながら、観世能楽堂のあるGINZA SIXを後にしました。
 
37回D組 高橋千津子(河島)

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