常任委員のつぶやき
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2025年1月31日
中埜朗子さんと截金
2024年11月下旬、「中埜暢人・朗子 木工・截金展」が日本橋三越で開催されました。
展示会会場
中埜朗子(なかのさえこ、卒業時姓 小林)さんは高校26回で、京都出身の暢人さんとご結婚されてから1984年に松久宗教芸術院截金教室で截金(きりかね)を習得、1989年には日本伝統工芸展に初入選、その技術を研鑽しその後も同展にて何回も入選や日本伝統工芸展近畿展での数回の受賞の傍ら、日本伝統工芸展近畿展の鑑査委員、審査委員を歴任されました。
ご主人の暢人さんは東京の美術大学で学んだのち石川県山中町立漆器研究所にて轆轤挽(ろくろひき)を習得、家業である京都の工芸工房を継ぎ、朗子さんと共に伝統的な工芸手法を守って多数の作品を制作しています。
中埜 暢人・朗子ご夫妻
私は同期の中埜さんを通じて截金のことを知ったのですが、ここで少し截金についてご紹介したく、中埜さんから頂いた資料を引用させていただきます。
截金(きりかね)
平安時代に日本独特の発達をとげた仏像や仏画の装飾法です。金箔や銀箔や色箔を竹の刀で細い直線や菱形等に切り、二本の筆で様々な形に膠やフノリで貼り、美しく輝く文様を構成していきます。同じ金の装飾でも金泥(金粉を膠で溶いたもの)で描いたものは数年で黒く変色しますが、截金(金箔)は年月を経てもその輝きを失いません。
ご夫妻は、暢人さんが轆轤の技術をもとに木の杢と色合いを生かした木工芸作品を制作し、朗子さんはその木地に截金をほどこし、美しい作品を作り上げています。元来は宗教美術に用いられる技法で、仏画や仏具など仏教と共に大陸より伝来した宗教芸術の一つですが、茶道具・花器・アクセサリーなど日々の暮らしで楽しめる作品も制作しています。木工には紫檀、桑、欅、黒柿などを素材にしますが、木工作品の木目の美しさにはため息しか出ません。また、朗子さんの截金には数枚の金箔を焼き合わせて細くまたは細かく裁断するのですが、裁断に使う竹の刀もご自身で使いやすいものを作っているそうです。
一年半ほど前に京都を訪れた際に、機会がありお二人の工房を見学させていただきました。暢人さんが実際に轆轤を挽いているところを拝見し、朗子さんのご厚意で截金体験もいたしましたが、制作しているところを見るのと実際にやってみるのは大違い。私の「金の無駄遣い」に胸が痛みました。改めて朗子さんの匠の技術に感動した次第です。
11月の展示会では伝統工芸展の歴代の出展・入選作品のほか、一輪挿しや小物入れ、蓋物、アクセサリー類の展示もあり、木のぬくもりと繊細な截金細工のコラボレーションを堪能いたしました。
第70回日本伝統工芸展入選作(2023年) 截金飾筥(きりかねかざりばこ)「玲瓏 (れいろう)」
「玲瓏 (れいろう)」の内側
第25回伝統工芸諸工芸展(2019年) 截金飾筥「游華( ゆうか)」
改めて日本の伝統工芸の素晴らしさに触れ、後世に伝承されることを祈ってやみません。そして私たち26回生は朗子さんが人間国宝になる日を待ち望み応援しているのです。
朗子さんの截金作品は格調高くとても素敵
宮内庁御用達に選ばれるのも納得です